ALTOスペシャルサイト > 「かしこく、ステキ。」な入門講座 > 紫舟流 書道講座 > 第1回 私にとっての『書』

皆さんが書道を始められるにあたり、「全く経験がない」「子供の頃に習っただけ」といった不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。でも大丈夫。『書』には4つの道具を使い、どんな文字を書くのかという目的、そして自分に向き合う心さえあればいいのです。
例えば、私は6歳の頃から書道を習っていましたが、高校を卒業して地元を離れるのを機に一度辞めてしまいました。しかし、社会に出て本当に自分がしたいことが何であるのかを強く考えたときに出てきた答えが、『書』だったのです。自分の想いや他人の願いを、『書』という方法で表現することの素晴らしさに気がついたからです。
上手く書くこと、綺麗に書くことも書道においては重要なことです。それと同じくらい私は『書』を通じて自分の気持ちを表現することの素晴らしさを、ぜひ皆さんに知っていただきたいと思っています。

書く文字とそこに込める想いを決めたら、「字通」「字統」(素晴らしい辞書)で字引きを確認します。次に、想いをしっかり理解し、表現するに相応しいであろう筆・墨・和紙を用意します。
道具がそろったら同じ墨・和紙・筆で一通り(部屋が一杯になるまで)書きます。その後、紙・墨・筆をどんどん変えていき、伝えたい思いが伝わる書ができるまで繰り返します。
そして、書いたその日のうちに、どの書にするかは決めず、必ず一日空けて冷静に選定します。
『書』に使われる筆、墨、硯(すずり)、紙は、「文房四宝(ぶんぼうしほう)(1)」と呼ばれます。
とある一流の書家は「書の上達法は良い道具を使うこと」と仰っていましたが、私はそれを「合う道具をきちんと選ぶこと」だと解釈しています。

私が道具を選ぶ際には「手にして心が落ち着く、邪魔に感じない、長く使える」といったことに注意しています。筆なら細光鋒(さいこうほう)(2)で、長鋒(ちょうほう)(3)のものをよく使います。これは太い線も細い線も滑らかに自由に書くことできます。

硯は中国の端渓(たんけい)(4)産の原石から作られ、墨を細かく削ることのできる麻子坑(ましこう)(5)の硯を。

墨は奈良産のものや、扱い方次第で驚くようなにじみを表現できる荒い墨を使っています。
紙は四国の手漉(てす)き和紙(6)を中心に使っています。これは筆の走りの良さだけでなく、長く飾っていただける作品を作ることのできる質の高い和紙だからです。
では、初心者の方はどんな道具を選べばいいのでしょうか。例えば、筆にも毛の種類や太さ、長さなどで様々な種類があります。私は、長さが短鋒(たんぽう)(1)、素材はイタチや狸、馬などの毛をまずお薦めします。適度な弾力があり筆のコントロールがしやすいためです。
一方、長鋒でも筆を立て、筆先を使って書くことで、初心者の方でも味わい深い字を書くことができます。重要なのは、書く人が扱いやすいと感じる道具を選んでいただくことだと思います。実際に手に持ってみたり、可能ならば試し書きなどをしてみてください。
そして、道具を使うことで最も重要なことが、道具を大切にする気持ちです。筆や硯は使用後、丁寧に水洗いし、きちんと乾かしてください。道具への愛着が増し、丁寧に使おうという気持ちへと繋がります。
「書は人なり」といいますが、「道具もまた人なり」。一人ひとりに合った道具というのは、その人にしか分からないものと言えるのでしょう。




