ALTOスペシャルサイト > 「かしこく、ステキ。」な入門講座 > 梅沢由香里流 囲碁講座 > 第3回 プロ棋士の世界

以前はよく「囲碁のプロです」というと、「で、どこの会社にいるの?」と聞かれましたが、やっと最近は「棋士」という職業が認知されるようになってきました。
今、「棋士」と呼ばれる人々は、日本棋院か関西棋院に所属しており、日本全国で450名ほどいます。そのうち約60名が女性です。
プロになるためには、年に一回試験があります。筆記試験などではなくプロになりたい人同士で対局をし、成績上位数名がプロになれるという仕組みです。大体14,15歳から17,18歳くらいまでにプロになる人が大半ですが、中には11歳でプロになった人もいます。
ちなみに私は22歳でプロになりましたので、この世界では大変遅いスタートとなりました。
プロになると、棋戦を戦うことができます。棋聖戦(読売新聞社主催)、名人戦(朝日新聞社主催)、本因坊戦(毎日新聞社主催)などという言葉を耳にしたことのある方もいると思います。これらの棋戦は棋士全員でトーナメント戦を行います。そしてある程度勝ち抜くとリーグ戦に所属できます。この中で1位になると、そのタイトルへの挑戦権が得られます。
挑戦者になると、タイトルホルダーと挑戦手合いを行います。7番勝負と呼ばれるものは、野球の日本シリーズのような形で、先に4回勝った方がそのタイトルを一年間名乗れるという仕組み。プロたちにとってはこのタイトルを獲得することが何より名誉なことなのです。
タイトルを取ると、棋戦によっては4,000万円程度の賞金がもらえます。
でもこの賞金を手にできるのは全棋士中一人。他の棋士たちには対局した分の対局料がもらえます。つまり、勝てば勝つほどたくさん対局料ももらえる、という仕組みです。当然ながら強い人が稼げる世界です。
私は2007年に初めて「女流棋聖」というタイトルを獲得しました。女性のみの棋戦なので賞金は一般棋戦とは違いますが、何よりタイトルを獲得できたということが本当にうれしかったです。
実はそれまで何度か決勝で敗れてタイトルを逃すというすごく悔しい経験をしていたのです。決勝で敗れてしまった時は、いま一つ集中力に欠けていたし、何より打つことがとても怖かった。チャンスというのは、楽しみだけれど怖さもあります。 それからいろんなメンタルトレーニングなどを受けてみましたが、結局そこまで変化は感じられなかったです。
タイトルを獲れた時とそれまでの一番大きな違いは、緊張して、とても怖いけれど「勇気」をもって取り組もうと思ったこと、そしてふとテレビで見かけた某アスリートの言葉「プレッシャーはなくなることはない。プレッシャーがある状態でいかに戦うかが大事」を耳にしたことでした。それまで何かとプレッシャーを消そうとばかり考えていたのですが、この発想は目からウロコでした。 気持ちの面がとても大きかったです。
囲碁の世界は、基本的に男性と女性が同じ土俵の上で戦います。先程お話をしたように、女性のみの棋戦もあるので女性棋士にとっては、一般棋戦も女性のみの棋戦も出場できるというわけで非常に恵まれています。
対局は大体月に2~3局。これも成績次第で変動します。勝っている時は次々手合いがあるわけですから必然的に忙しいです。その他の日は何をしているかというと‥基本的には対局に向けての勉強、そして指導、その他普及活動です。
大体の若手棋士は手合いに向けて必死に勉強しているケースが多く、年齢が上になるにつれて普及活動の割合が増えます。
ここまで国内のお話をしてきましたが、少し世界にも目を向けてみましょう。囲碁のプロ制度は、日本のほかに中国、韓国、台湾にあります。最近は世界戦を行うと、中国、韓国が強い。日本はなかなか勝てず、2005年以来日本の優勝はありません。
中国で囲碁は「スポーツ」とされています。頭のスポーツという意味でしょう。棋士たちの人気も高く、数年前に行われた好きなスポーツ選手ベスト10に囲碁の棋士が数名選ばれたそうです。とてもうらやましい話です。
何より日本は世界戦で勝てるようになること。これが囲碁の普及にも人気向上にも不可欠だと思います。
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